HDDマイニング「Chia」を始めたので実録レポートします!
HDDマイニングの仕組み
ハードディスクを使って暗号資産(仮想通貨)の採掘ができると、Twitterなどで話題となった「Chia」。需要が急増し、秋葉原界隈からHDDが枯渇するといった現象も起きた。
Chiaはブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズム「Proof of Capacity」を採用しており、ストレージに応じて採掘権を決定し、取引を承認する。
予めストレージにハッシュ値のリストを保存しておき、ブロックに該当する値を最も速く発見した人が、報酬を受け取れる仕組みだ。当然、大容量であればあるほど確率が上がる。
参考:Investopedia
ちなみに、Chiaの他にもストレージを使った「Proof of Capacity」を採用する仮想通貨は存在する。
BitcoinHDにSinga、Diskcoin等。あまりにも知名度が低すぎて、情報が乏しい。物好きの方以外非推奨。
また、似たような仕組みに「Proof of Storage」がある。こちらは、世界中からストレージ容量を募り、大きなクラウドストレージを形成するようなイメージだ。
用語
耕地(Plots) | HDDに書き込まれるファイル。プロット。 |
耕す(Plotting) | 耕地を作る作業。 |
農家(Farm,畑) | 耕地の集まり。 |
耕作(Farming) | 農家をネットワークに接続して、取引の正当性を証明すること。 採掘(マイニング,ファーミング)。 |
収穫(Harvesting) | 報酬を受け取ること。 |
Chiaの始め方
おおまかな流れは以下の通りである。
- ソフトをダウンロード
- アカウント登録
- 耕地の作成
- (プールへの参加)
- チアの収穫
各過程で待ち時間が多いので、放置が基本となる。
専用ソフトの導入
以下のリンクから自分のOSに適合するソフトをダウンロードする。
ハッシュ値の確認(飛ばしてOK)
念のため、ダウンロードしたソフトが偽物でないか、SHA256ハッシュ値を生成し、ファイルの同一性を確認する。
- コマンドプロンプトを開く
- cdコマンドで該当パスへ移動
- 「CertUtil -hashfile ChiaSetup-1.2.5.exe SHA256」を実行
- 公式サイトに掲載されているハッシュ値と一致していればOK
exeファイルを実行しインストール
ダウンロードしたexeファイルを実行すると、インストールが始まる。
特にウィザードが開始されることも無いため少々驚くが、以下のような画面は正常。
Windows Defenderなどのセキュリティソフトに検出された場合は、アクセスを許可しておく。
GUI画面が表示されればインストール完了だ。
アカウントの作成と設定
新しい秘密鍵を作成する。「Create a New Private Key」を選択。
ちなみに、右上から日本語に変更することも可能。よくある機械翻訳な感じなためお好みで。
以上で登録は完了。接続状態が”接続済み(Connected)”になっていれば正常だ。
同期中(Syncing)の表記が消えるまで待機する。ブロックの先端に追いつくまで続くので、かなり時間がかかる。
耕地を作成する
次に、実際にPlottingしていく。ファイルを一時保存するSSDと最終保存先のHDDが必要。
CPU
スピードはCPUの性能に依存する。今回は「Core i7-11700」を使用。
SSD
プロット作成時に一時的にファイルを置いておくSSD。こちらも作成時間に関わるので、速度が速いNVMe SSDがおすすめ。使ったのは「Samsung 980 Pro」。
HDD
最終的なプロットファイルの保存先。余っていた1TBのHDDが2枚あったので、Raid0(ストライピング)を組み、一つのドライブにした。
ファームとして使用するHDDに関しては、読み書き速度はほとんど影響しないと思う。
手順
耕地(Plots)タブへ行き、耕地を追加(Add a Plot)する。PCを変えた場合など、すでにあるプロットを追加することも可能。
耕地の大きさを選択する。101.4GiBの耕地作成の場合、一時フォルダの空き容量239GiBが必要。HDD、SSDそれぞれの容量と相談して決めよう。
複数の作成を並列で個なうこともできる。最大使用RAMは贅沢に30,000GiB、スレッドは12使った。バケツ数は128のままでOK。
一時ファイルの場所と、最終的にプロットを保存するディレクトリを選択する。適当なフォルダを作っておくと良い。
プールへ参加する場合は、選んでおく。(プールについての詳細は後述)
耕し中は進捗が表示される。100%のままになることもあるが、放置しておく。
PCのリソースはそこそこ消費する。
”耕作中”にステータスが変われば完了だ。
マイニングプールへ参加
ソロマイニングも可能だが、報酬が貰える確率が限りなく低い。少しでも報酬が欲しい!という方はプールに参加することをおすすめする。詳細は後段で解説。
チアの収穫
プロット作成が終わったら、ソフトを起動し放置しておくだけだ。ブロックが当選すれば、報酬が支払われる。(現在は2XCH≒48,000円が貰えるらしい。)
プールの場合は参加者に配分される。
公式プールの参加方法
お待たせしました。ここからはマイニングプールへの参加手順を見ていく。
Chiaを少しだけもらう
プールに参加するためには、0.000000000001XCHが必要。以下のサイトで配布しているので、貰おう。
- Chiaソフトの”ウォレット”タブに移動
- 受取アドレス(Receive Address)をコピー
- サイトにアクセスし、アドレスを入力、送信
- 取引が承認次第、ウォレットに入金される
数分で自分のWalletに到着する。
(うまくいかない場合は僕のTwitterにご連絡いただければ送金します。)
準備は完了。公式=公認プロトコルを使用して開発されたプールへ加入する。
Chiaのマイニングプールは多数存在するが「EcoXch」を選択した。旧名は「EcoChia」で2021年8月に名称が変更された。
EcoXchを選んだ理由
- 公認プロトコルを使用している
- そこそこシェアが高く、ブロックの発見頻度も高い
- iOS/Androidアプリでモニタリング可能
- 参加者がブロックを発見すると通知される
公認プロトコルを使用している
前述の通り公認プロトコルを使用したプールであるため、ある程度信頼できると考えられる。
Chiaスタート直後の2021年5月くらいまでは、ソロマイニングが基本で、非公式プールしか存在しなかった。秘密鍵を入力する必要があり、多少なりともリスクがある方法だった。
そこそこシェアが高く、ブロックの発見頻度も高い
Mining Pool Statsというサイトで総ネットワーク容量に対するプールの割合を確認することができる。
2021年9月現在では、20位に位置している。他プールに参加する場合は、適正な手数料(1%程度)であることや、ブロックの発見頻度が高いことを基準に選ぶと良い。
iOS/Androidアプリでモニタリング可能
iPhoneとAndroid向けのアプリが配布されており、現在の収益性や、支払い履歴を確認できる。
UIの見やすさも、採用の決め手となった。
参加者がブロックを発見すると通知される
アプリの通知を許可すれば、プール参加者の誰かがブロックを発見すると、プッシュ通知される。
また、Chiaの価格情報も適宜通知されるので便利だ。
EcoXchの参加方法
Poolタブに移動し、JOIN A POOLを押す。
Pool URLにhttps://asia.ecochia.ioと入力。手数料として最低単位0.000000000001XCHを支払う。
作成(CREATE)ボタンを押し、取引が承認されるまで数分程度待機する。
これでプールに参加できた。
Launcher Idの文字列を公式サイトに入力すれば、外出先でも状況をモニタリングできる。
Chia画面の見方
フルノード
ホームタブでは、Chiaネットワーク全体の総容量やブロックの状況、難易度などを閲覧できる。ソフト起動後に”同期完了”になれば、頻繁に確認する必要はない。
ウォレット
ここでは、自分のウォレットの全残高と入出金の履歴が見れる。外部のウォレットや他人への送金も可能だ。
耕地
自分のHDD上に作った(または作成中の)耕地をチェックできる。
農家
チアの収穫状況や報酬が当たるまでの推定時間が見れる。もっとも、プールに参加する場合にはあまり関係ない。
Pool
マイニングプールへの参加はPoolタブで行う。複数のプールに参加したり、変更したりすることも可能だ。
送金方法
Create Transactionに相手のReceive Address、送金額、手数料を入力して送信。
ブロックが承認されると、相手のウォレットに入金される。
以下が筆者の受け取り用のアドレスだ。私にジュースを奢ってくれる人はChiaを恵んでください。
xch17ntpal80u4uqkc2rxw29dcxska3v9fxdx9ngux6hy23pt3p5z53q30cftz
(お礼はできません…特にメリットはないです)
利益・効率
公式サイトで、収入をシミュレートできる。
現在の水準が続くと仮定すると、2TBのプロットで一ヶ月に約310円の収入が得られる。電気代を無視すると、2TBのHDDの相場が6,000円~を、2年以内には回収できる計算だ。
実際に、1ヶ月ほどで0.005XCH≒100円ほどが得られた。(24時間稼働させていたわけではない。)
次に、大容量のHDDであれば単価が低くなることや、耕地作成用のSSDが実質使い捨てとなる(後述)点を考慮して計算する。
収入 | 152,000円(36TB,2年分) |
支出 | 18TB×2 HDD 140,000円 1TB SSD(M.2) 12,000円 |
損益 | 0円 |
この想定では、2年でようやく±0になる。ここから、電気代(100W,単価27円)47,200円を控除すると、赤字になってしまう。やはり、GPUマイニング等と併用しなければ利益を出すのは難しいと言える。
もちろん、現在の相場が続く保証は全く無いし、自身の農場の相対シェアが低下して収益性が落ちる懸念もある。
Chiaマイニングの注意点
- 耕地の作成に時間がかかる
- SSDのTBW(総書き込み可能容量)に到達しやすい
耕地の作成に時間がかかる
筆者の環境では、101.4GiBのプロット作成に約3時間半を要した。
SSDのTBW(総書き込み可能容量)に到達しやすい
SSDにはTBWと呼ばれる寿命が存在するため、大量に作成する場合は注意が必要。
101.4GiBのプロット作成を行ったところ、約1.4TBの書き込み/読み込みが発生した。今回使用したSamsung 980 ProのTBWは600TBであり、約42TB分で寿命に到達してしまう。
ただし、個体差もある他、TBWに到達したからと言ってすぐに壊れるわけではない。
メリット・デメリット
メリット
- 余っているPCを活用できる
- 電気代が安い
- 火事になりにくい
- 草コインで大儲けできるかも?
余っているPCを活用できる
特別なハードウェアを必要としないため、参入のハードルは低い。試しに数TB耕作してみる、っていうのも全然アリ。
電気代が安い
GPU/ASICマイニングに比べて消費電力が圧倒的に低いため、総じて電気代は安く上がる。ただし、他PCパーツによってはそれでも赤字になることもあるので、従来型マイニングと併用しながらやるのが良いと思う。
火事になりにくい
GPUマイニングは一歩間違えると普通に火事になるので、管理が大変だ。消費電力の少ないHDDマイニングは、その心配はほとんどないと考えられる。
草コインで大儲けできるかも?
もっとも、この記事を読んでいるような人は、新しいモノ好きが多いと思う。もしかしたらChiaの値段が100倍、1000倍…になる可能性が無いとは言い切れない。そんな夢を見させてくれるのが、草コインの魅力だろう。
デメリット
- 換金が面倒
- 情報が少ない
- 今後の値動きが不透明すぎる
- 面白さが少ない
換金が面倒
記事執筆時点では日本国内でChiaの取り扱いがある取引所がない。そのため、海外の交換所でビットコインなどに変えた上で、国内取引所に送金する必要がある。
手数料もかかるため、筆者は当面換金せずにChiaのまま放置する予定だ。
情報が少ない
Chia自体、2021年に始まったばかりであり、まだまだ日本語の文献が少ないように感じる。何かあった際に、英語その他の記事を参照できる覚悟のある人のみやるべき。
今後の値動きが不透明すぎる
ピーク時の価格から4分の1程度に下落しており、今後どうなるかは誰にも分からない。投資目的で見ると、ハイリスクハイリターンである。
面白さが少ない
個人的な感想だが、グラボ/CPUマイニングに比べて、何だか地味で面白さに欠ける。HDDの性能にほとんど左右されないため、ベンチマークを回すような楽しさがあまりないと感じた。
まとめ
HDDでマイニングができると話題にもなった「Chia」。筆者もまだまだ手探り状態のため、今後も動向を注視していきたい。ここは違う!といった指摘や・意見・アドバイスもコメントやTwitterで頂けると有り難い。
軌道に乗ったら、より上級者向けのRAMディスクを使った方法やCUIソフト(MadMax)にも挑戦してみようと思う。
お手持ちのPC+αで、誰でも簡単に始められるChiaファーミング。テクノロジー好きのあなたも、一度体験してみては如何だろうか。
リンク,参考文献:Chia,EcoXch,Investopedia,TRUSTPOOL,tom’sHARDWARE,chia explorer
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