2023年7月に登場したGoogleの折りたたみスマホ「Google Pixel Fold」。auの施策を用いて約3.3万円で入手することができた。
この記事では、同機種を約1ヶ月使用した筆者が、そのメリット・デメリットをレビューするとともに、Googleの狙いやコンセプトについて考察する。
発売から時間も経過しているため、詳細な解説というよりは主観的な意見・感想となるためご承知いただきたい。
約1ヶ月使った感想とメリット・デメリット
Google Pixel Foldの良い点・悪い点を、ハードウェアとソフトウェアに分けて紹介する。
ハードウェア
結論から言うと、Pixel Foldのビルドクオリティは低く「試作品のような初代機」という印象だ。
- IPX8の防水対応
- 5Gミリ波(n257)対応
- 心地よいバイブレーション
- グッと力を加えないと180°まで開ききらない
- ヘビー級の重量
- 水滴型ヒンジが深く、半折り状態では歪んで見える
- 音量と電源ボタンの位置が慣れない
- 内側フィルムとベゼルの間にホコリが溜まる
- 開閉時に表面フィルムから軋む音が鳴る
- 発熱が気になる
- バッテリー持続時間は体感△
デザインについて
開いた時は、小さめのタブレット端末。“案外小さい”という感想は、折りたたみ機種を買うと毎度思うところ。
上下のベゼルは太めでスタイリッシュさには欠ける。しかし、実際は縁に指を載せて端末を支えるような形になるので、適度なベゼルはむしろ扱いやすいと感じた。
本体重量は283gとかなりのヘビー級だが、開いた状態ではそれほど不快感はない。
閉じた時の横幅は、iPhone 15 Pro Maxと同じくらい。歩きながら持っていると落としそうになるので、自然と両手持ちになった。
重さも相まって“塊を持ってる感”がすごい。敢えて言うなら、2台のスマホを重ねて盛っているような感覚だ。
約1ヶ月間使っても、どうしても慣れないのが「電源ボタンと音量ボタンの配置」だ。
多くのAndroid機と異なり、上が電源・下が音量の配置になっている。複数台のスマホを併用する筆者は、どうしても体が覚えてくれず、意図しないボタン押下が頻発している。
それだけなく、片手でスクリーンショットを撮りづらい(電源+音量下)ので、シンプルに不便だと感じた。
ヒンジは硬め
Pixel Foldのヒンジは比較的硬めに作られている。半開きのままでもホールドし易いというメリットがある。
致命的なのが、閉→開の状態に移行する時、一発で180度まで開ききらない点だ。グッと力を加えれば水平になるが、それが最初は結構怖かった。構造的な問題のため、次期モデルでは改善してほしい。
折り目はかなり目立つ
フォルダブルディスプレイ特有の「折り目問題」。
Pixel Foldは、同カテゴリーのスマホと比較して折り目がかなり目立つ方だ。
動画視聴中はさほど気にはならない。ただ、他にもスマホを持っている中で、敢えてPixel Foldで見ようとは到底思えなかった。
せっかくのコンテンツが台無しになるので、娯楽として映像を楽しみたい方にはおすすめできない端末だ。
閉じた時の隙間を無くすため「ティアドロップ形状」を採用。Pixel Foldの場合、かなり深めにディスプレイを湾曲させているため、中途半端に閉じた状態で使おうとすると中央部分の歪みが大きくなってしまう。いわゆる“エッジディスプレイ”苦手派の方は、辞めておいた方がいいかも。
スペック面は必要十分
スペック表から読み取れる部分では、折りたたみスマホでは少数派のIPX8防水対応はやはり安心感がある。
SoCはGoogle Tensor G2を搭載。昨今のフラッグシップ級端末と比較すると数値は劣るが、自分の使い方では性能上の問題はなかった。
ただ、軽いゲームや普通の作業でも熱を感じたので、過度な期待は禁物。あくまでミドルレンジといったところ。
ソフトウェア
次はソフトウェア面についてレビューする。
- 画面分割前提のUI
- フリーフォームウィンドウが使える
- シンプルなマテリアルデザイン
- Kindle見開き表示はちょうど良いサイズ
- アプリの表示アスペクト比は変更可能
- Pixel Launcherが使いづらい
- アニメーションはシンプルだがこだわりは感じない
- 開いた時に顔認証できない
- アプリ使用中の開閉は難あり
画面分割前提のUI
Pixel Foldは、画面を分割して2つのアプリを使うことが前提として設計されているように思う。
ちょうどスマホ2つが横に並ぶ感じになるので、かなり使い勝手が良い。
筆者はGalaxy Foldシリーズも経験してきたが、同シリーズでは結局画面分割が定着しなかった。他方Pixel Foldは、“横長ディスプレイ”という特徴に起因してなのか、積極的に複数のアプリを同時に使いたくなる。
横画面でプレイするゲームとの併用も可能。毎日プレイするソシャゲ等がある方は結構便利かもしれない。
一方で、特殊なアスペクト比に最適化されたアプリはまだまだ少ない。例えば、Xでは領域の無駄遣いとしか思えない表示になっている。
また、ナビゲーションバーとステータスバーの専有面積が大きく、実質的なコンテンツの表示領域が狭すぎるのも残念ポイント。せめてバーの非表示をできるようにしてほしい。
現状では画面分割したほうがレイアウトが見やすく、色々と便利だ。
Pixel由来の使いづらさ
本当に元も子もない話だが、Pixel Fold最大の欠点は「Google Pixelであること」だ。
標準搭載されている「Pixel Launcher」は融通が効かず、とにかく使いづらい。
- ホーム画面の日付が消せない
- 画面下の検索ボックスが邪魔
- タスク画面の一番左までスクロールしないと全消去できない
- 開いたときに顔認証できない
- SIM 切り替えが面倒
カスタムAndroidに慣れていると「痒いところに手が届かない」もどかしさを感じた。
「だったらランチャーを変えれば良いのでは?」と思うかもしれないが、折りたたみスマホの場合そういうわけにもいかず。
Pixel Foldが競合に勝つためには、根本からソフトウェアを見直す必要があるだろう。
まとめ:Pixel Foldは今後に期待の「Googleスマホ」初代機
Google初の折りたたみスマホとして、鳴り物入りで登場した「Google Pixel Fold」。
当然ながら、同端末は自社のサービスを使わせるためのスマホだと実感した。
「横長メインディスプレイ」は、以下の2つを快適に実現させる最良のフォームファクターだと考えられる。
- 2つのアプリを併用する
- コンテンツを大画面で表示する
たとえば、「検索エンジンやマップを参照しながら、Keepメモに旅行の予定を記録する」といったシーンは、1.に該当する。これらのツールをすべてGoogleが提供しているため、同じ操作感でシームレスに利用できるメリットがある。
YouTubeなどのコンテンツ自体が商品であるサービスは、単純に全画面表示すればよい(2.)。
いずれにしても、広告を主な収益源としている同社にとっては、都合が良いのだろう。Google Pixel Foldは、「Googleサービスを使わせるためのGoogleスマホ」なのだ。
前述の「Pixel由来の使いづらさ」についても、このような考え方に起因していると考えられる。この部分については、「自由なAndroid」を潰さない程度に制限を緩めるべきだと思う。
“開いて横長”というコンセプト自体は理に適っており、筆者の第一印象も良かった。しかしながら、使い込むにつれて、ハード・ソフトの両面で完成度が追いついておらず、どうしても使いづらさが先行するようになった。
結論、「今後に期待」の一言に集約されるだろう。クオリティアップの先には、Googleの思い描いた“便利さ”を最大限に享受できるスマホになるはずだ。
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