総務省は2023年11月22日、「電気通信事業法施行規則」の改正に関する意見や有識者による答申の結果を報道機関向けに公表した。
「スマホ割引規制」に関して、2万円を上限とする現行のルールを見直し、本体価格に応じて段階的に4万円までとする改正が行われる。
当初、同省令を2023年12月中に公布・一部施行し、2024年1月1日に全部施行するとしていたが、この度の修正により2023年12月27日に全部施行されることとなった。
本記事では、新たな割引規制の内容を解説するとともに、「今後も1円スマホが無くならない」理由について考察する。
「白ロム割」が横行する現行規制
はじめに、現行の割引規制について見ていこう。
現在のスマートフォン等の割引は、2019年10月1日に施行された「電気通信事業法施行規則」によりルールが定められている。
総務省は「通信料金と端末代金の完全分離」や「行き過ぎた囲い込みの是正」を標榜し、端末代金の値引き等の利益提供額の上限を税抜2万円とした。
また、解約に伴う違約金や期間拘束の有無によるプラン料金の差別化に制限が設けられた。
そのため、時には数十万円にのぼった端末値引きやキャッシュバック、実質的ないわゆる”○年縛り”は不可能となったのだ。
本規制は一定期間効果を発揮していた。
2020年春頃より抜け道が利用される
ところが、2020年春頃より各社は抜け道とも言える方法で端末安売りを始めた。
前述の通り、現行法では一部の例外を除き、通信契約を条件とした端末の割引等の利益提供の上限が税抜2万円と定められている。裏を返せば、通信契約を伴わない割引(白ロム割)は規制対象外である、ということだ。
つまり「“乗り換え価格”と“端末のみ価格”の差額を2.2万円にする」ことで、裏技的に大幅値引きを実現したのだ。
2020年9月には、SoftBankがこの抜け道を利用し、当時の最新ハイエンド機「AQUOS zero2」を一括2万円台で投げ売りしたことから、端末だけを安く手に入れる「移動機物品販売」が瞬く間に広まった。
2021年夏頃からは、各社がiPhoneなどを競うように大幅値引きし始め、翌年3月には「iPhone 12」が一括1円で販売されるまでとなった。
しかしながら、「端末のみ安く販売しなくてはならない」この仕組みは、いくつかの問題点を抱えていた。
当然ながら、商材を安く買って市場で再販売する“転売ヤー”が目を付けた。また、販売側にとっても通信契約を伴わない端末値引きはメリットが無く、転売対策と称して違法な「在庫隠し」が常態化するようになった。「客が回線セット契約をしないことが分かると在庫が消える」「在庫があるにも関わらず“予約者が居る”」などと説明されるケースは、筆者も何度か経験した。
これらの高額な利益提供は、契約者の通信料金が原資となっており、総務省の当初の目的である「通信料金と端末代金の完全分離」は、もはや成し得なくなったのだ。
加えて、「一括1円」などの極端の安売りは、独占禁止法における不当廉売に当たると解され、関連省令改正の機運が高まった。
割引は「段階的に最大4万円引き」に変更
上記のような経緯があり、この度2023年12月27日に、新たな電気通信事業法施行規則が施行されることとなった。
新しい省令では、いわゆる「白ロム割」が規制対象となり、端末単体販売時の割引ができなくなる。
利益提供額の上限については、端末価格に応じて段階的に4万円まで割引が可能となる。
- 端末価格4万円まで … 2万円まで割引可能
- 端末価格4万円~8万円 … 価格の50%まで割引可能
- 端末価格8万円以上 … 4万円まで割引可能
また、割引の基準となる「対照価格」についても、最低でも調達価格が基に計算されるため、通常販売価格を下げる抜け道は塞がれる。
それでも「1円スマホ」は無くならない
ここからは、12月27日以降の値引き規制後も「1円スマホ」が無くならないと思う理由について説明する。なお、筆者の個人的な予想が含まれる点にはご留意いただきたい。
現状の「1円」スマホは2種類
2023年11月現在、家電量販店やショップ等で行われるスマホの「1円販売」は、2種類に大別される。
- 乗り換えで「一括1円」/端末のみ22,001円
- 返却プログラムを用いた「実質1円」
後者は、端末を割賦販売した上で、一定期間後の機種本体返却により残価相当額の支払いを免除するというもの。実質的な「レンタル方式」である。
筆者が「今後も続く」と予想する1円販売はこちらの方だ。
一部店舗で規制を見据えた対応がみられる
考えうる回避パターンはいくつか存在する。
- 異常に高い残価設定を行う
- 下取り込みの実質価格での訴求
既に、一部店舗ではその片鱗が見え始めている。
1枚目の画像では、「Google Pixel 8」が他社の乗り換えで月々1円となる。
注目すべきは「端末単体購入の場合に1円も値引きが無い」という点だ。端末返却で支払いが免除される残価部分の金額を端末価格に近い92,496円にすることで、通常の回線契約特典(-21,984円)のみで月々1円が実現されている。
「Google Pixel 8」がプログラム適用の満期となる約2年後に9万円以上の市場価値を有しているとは、到底思えない。このような根拠なき残価設定は、新規制への対応というほか無いだろう。
また、2枚目の画像では古い機種の下取り(-42,000円)が前提で「iPhone 15」の価格が訴求されている。
新たなる抜け道とも言えるこれらの方法は、既に答申書の有識者意見で指摘が挙がっている。しかしながら「今後の検討事項の参考にする」との記載に留まっており、今回の改正では規制対象外になると思われる。
他にも、光やカード等の付帯サービスとしての特典付与といった潜脱手段はいくらでも考えられるだろう。
将来の買取価格等の設定に根拠の提出が必要となるようです。そのため、異常に高い残価設定は難しくなる模様。
1つめの予想は間違ってるかもしれませんね…。
とはいえ、キャリアが何の意味もなく新機種の後半残価を盛っているとも思えないのですが、なにか秘策があるのでしょうか。
クリスマスセールは最後のチャンスか
事実と予想を踏まえ、お得にスマホを入手する方法について考える。
- 一括値引狙いは12月26日までに急げ!
- 「レンタルで良い」という方は年末年始まで待っても良いかも?
端末の返却が不要な「一括案件」狙いの方は、要注意だ。特に、規制変更前最後の週末となる12月23日~24日前後のクリスマスセールは、ラストチャンスと言えるだろう。
逆に、レンタル方式で2年使えれば十分、という場合は初売りや年度末特価まで待機するのが良い可能性がある。例年どおりであれば、月々1円に加えてキャッシュバックやポイント付与が上乗せされるなど、通常時よりキャンペーン予算が増額されるからだ。
とはいえ、イレギュラーな状況下で派手な施策が打たれるとは限らない。こればかりは何とも言い難いが、安全策としてやはり12月最終週までに契約しておいた方が良いとも考えられるだろう。
当サイトでは、スマホのセール・特価情報について、今後も記事を執筆する予定だ。
参考・画像引用:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正に関する意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申」,「電気通信事業法の一部を改正する法律」
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